
AIに仕事を奪われる?
臨床工学技士って調べると「やめとけ」って出てくるけど、ならない方がいいのかな?
こういった疑問や不安に応える記事です。
この記事でわかることは下記のとおり
この記事でわかること
- 臨床工学技士の現状
- 臨床工学技士の需要
- 臨床工学技士の将来性
- 臨床工学技士の働き方
僕、富樫リクは現役の臨床工学技士です!
以前は三次救急病院で働いており、現在は中規模病院で働きながら執筆活動をしています。
現役だからこそ伝えられる「臨床工学技士のリアル」をお伝えしますね。
結論、臨床工学技士に需要がないなんてことはありません。
むしろ医療機器の発達や、AI化によって需要は高まっています。
この記事では、臨床工学技士を目指す前に知っておいた方がいい情報をまとめました。
目次
1.病院によって大きく違う、臨床工学技士の現状とは
臨床工学技士の業務範囲や待遇は病院によってかなり違います。
なぜなら臨床工学技士は比較的新しい職種なので、病院によって考え方や法律の解釈が違うから。
例えば、総合病院でもこれだけ違います。(知り合いの情報を元にしています)
病院 | 業務 | 勤務体制 | 休日 | 給料(手取り5年目) |
A病院 | 医療機器管理・透析・OPE室・心外・心臓カテーテル・集中治療室・ER業務など | 日勤、当直、オンコール | 変則・少ない | 35万円程 |
B病院 | 医療機器管理・OPE室・内視鏡室 | 日勤 | 固定・多い | 23万円程 |
C病院 | 医療機器管理・透析・OPE室・心外・集中治療室・高気圧酸素など | 日勤、夜勤 | 変則・普通 | 28万円程 |
このように、行っている業務や勤務体制・給料にかなりの差があります。
また、同じ集中治療室業務でも内容は病院によって異なっていて、
- 臨床工学技士が患者の状態を把握して医療機器の設定を医師に進言し、指揮をとっている病院
- 医師だけで医療機器の設定を決め、臨床工学が操作する病院
など、臨床工学技士の任されている範囲が違ったりします。
このように臨床工学技士は病院によって業務が大きく異なる職種のひとつ。
業務が違うので、給料・勤務形態・院内での地位も病院によって大きく変わってきます。
もちろん、総合病院と透析クリニックではさらに業務内容が違いますよ。
2. 臨床工学技士の需要はどのくらい?なぜ否定的な記事が多いのか
臨床工学技士の今後の需要は大いにあります!
医療機器はどんどん進化していて、進化した医療機器に対応できるのは院内で臨床工学技士だけだから。
新しい医療機器が院内に導入されたとき、臨床工学技士は以下のことを行います。
- 治療効果や使用方法の把握
- 院内での運用方法の決定
- 起こりやすいトラブルや故障への対応方法・管理方法の把握
医師や看護師は、治療効果や使用方法は把握していますが、トラブルや故障への対応は医療と工学に精通している臨床工学技士でないと難しいです。
管理方法も臨床工学技士がメーカーから教わり、責任を持っておこないます。
新しい医療機器を導入する前にも臨床工学技士が機能や金額をメーカー同士で比較するので、必要な機械を適切な値段で購入できます。
このように臨床工学技士は病院の運営を金銭面からもサポートします。

臨床工学技士がいない病院はメーカーが管理を行ないますが、かなりのお金がかかり、トラブル対応にも時間がかかります。
また、適切な管理をするのが難しいので故障や破損も多い印象です。
(僕の現在の病院も以前は臨床工学技士がいなかったので、故障も多くて毎回メーカー修理に出していたそうです。。)
この様に、進化する医療機器を医療と工学の視点から管理して患者に使えるのは臨床工学技士だけです。

確かにネットで調べると否定的な意見が多いです。
2.1「需要がない」と言われる理由
実際に臨床工学技士の需要が減っている分野もあります。
例えば、人工透析
人工透析は臨床工学技士の代表的な仕事の一つです。
しかし、透析患者は医学の進歩で今後減っていくと言われています。
患者の減少により、透析クリニックの仕事はいずれ減っていくでしょう。
実際に2022年に減少に転じました。(とはいっても透析患者数はまだまだ多いです。)

しかしこれは、臨床工学技士の需要が減っているのでは無く、需要が変化しているともいえます。
透析クリニックでの需要は減少する可能性がありますが、高度な医療機器を扱う病院での需要は拡大しています。
このように、需要のある場所が変化しているので、減った部分だけを見ている人は需要が減ってしまったと思うかもしれません。
また高度な医療機器を扱わない小規模の病院では、そもそも臨床工学技士がいないところもあります。
このようなことも合わせて、「臨床工学技士 需要ない」と言われる理由となります。
2.2「やめとけ」と言われる理由
全ての病院に当てはまるわけではないですが、やめとけと言われる理由は下記の5つが多いです。
- 基本給が低い
- オンコール・当直・残業がある
- 働ける病院の種類が少ない
- 休みにくい
- 院内のポジションが低い
基本給が低い
基本給は他の医療職と比べても低めです。
職業 | 臨床工学技士 | 臨床検査技師 | 診療放射線技師 | 理学療法士/作業療法士 |
平均年収 | 459.3万円 | 508.5万円 | 537万円 | 432.5万円 |
特に田舎の病院や、規模の小さい透析クリニック、残業などがあまりない病院は給料が低い所が多いです。
企業病院や大手病院(大手グループ)であったり、夜勤や残業が多い病院では水準以上もらえたりします。
オンコールや夜勤、残業がある
急性期病院で勤務をすると、オンコール当番(呼び出し待機)や当直(院内での待機)、残業がある場合が多いです。これらは実際ハードです。(その分、手当はもらえますが、、)
以前僕が働いていた病院だと、
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
日勤 | 日勤+当直 | 明け | 日勤→オンコール | 日勤 | 休み | 日勤+当直 |
のような勤務でした。
周りの病院の中でもハードな方でしたが、救急病院だと割とこのような勤務になると思います。
働ける病院の種類が少ない
臨床工学技士の起源は、
医療機器が進化しすぎて医師・看護師で見れない、専門家を作ろう。
という話からできました。
なので、高度医療機器がある大きな総合病院、透析クリニックは需要がありますが、そのほかの病院ではあまり需要がありせん。(医師や看護師で機械を管理できればこと足りる。)
求人募集数は他職種より少ないです。
(都市部は割とたくさんありますが、田舎の方だと選択肢が少ないかもしれないです。)
休みにくい
院内の臨床工学技士の人数が少ない場合、休みがかぶらないようにするために休みが取りにくい病院もあります。
院内でのポジションが低い
ほかの職種より歴史が浅いため、院内でのヒエラルキーが低めの病院も多いです。
病院のパソコンなども本来は管轄外ですが、トラブル対応をお願いされることもあります。。
以上のような特徴の病院は実際多いと思います。
ただ病院によっても違うので、就職する際にはしっかり見極める必要があります。
3. 臨床工学技士の将来性は?
臨床工学技士の将来性は大いにあります。
臨床工学技士はこれまでも医療の進歩にあわせて変化してきてるからです。
生物も、変化できるものが生き残れますよね!
実際いままでも臨床工学技士は状況に合わせて変化してきました。
1987年 | 臨床工学技士が誕生(人工透析・人工心肺・ME機器管理が主流な業務) |
その後、医療機器の進歩にともなってどんどん業務拡大 ペースメーカー、アブレーション(不整脈治療)、心臓カテーテル、内視鏡、高気圧酸素療法など | |
2008年 | 増加する医療機器事故への対応として臨床工学技士を配置するべきとなり診療報酬「医療機器安全管理料」が創設 |
2010年 | 呼吸ケアチーム加算が創設、臨床工学技士も算定条件に |
2014年 | 特定集中治療室加算料の算定施設基準にて臨床工学技士が必須となる改訂 |
2021年 | 法改正により、臨床工学技士のおこなえる医療行為が拡大 |
このように、臨床工学技士は常に業務変化・業務拡大を行っていています。
今後も医療機器の進化は必ず起こります。
臨床工学技士も一緒に進化していく職種ですよ。
3.1 AIの進歩が与える影響
現在、医療機器の分野においてもAI(人工知能)が進歩しています。
結論、AIの進歩によって臨床工学技士の将来性はさらに高まるといえます。
AIを使いこなすには、AIを使いこなす人間が必要だから。
むしろ、AI搭載の高度な医療機器を扱い、管理するのに臨床工学技士以外の適任はいません。
実際、様々な臨床工学技士関連の学会でもAIに関するものが増えてきました。
AIの進歩によって臨床工学技士の業務範囲もさらに広がりますね。
4. 臨床工学技士の働き方【選択肢はたくさんある】
臨床工学技士は国家資格です。
資格がある分、働き方の選択肢はたくさんあります。
始めにお伝えしたとおり、臨床工学技士は病院によって業務や働き方が異なります。
なので、自分に合った働き方が見つけやすいんです。
バリバリ経験を積んで、お金を稼ぎたい
→救急病院でオンコールや当直をする
プライベートを確保しながら臨床で働きたい
→透析クリニック(準夜勤があれば給料もUP)
医療機器の知識を活かして会社だはたらきたい
→医療機器メーカーで営業や開発
医療機器の修理とかが楽しい
→医療機器メーカーで修理対応
など、さまざまありますよ。
ただ、病院の少ない地域だと選択肢が少ない可能性があるので注意が必要です。

僕の場合、元々は大手総合病院で勤務し、幅広く臨床経験をしていました。
子供が産まれ、育児に時間を割くのが難しくなり、転職を決意します。
以前の経験を生かし、落ち着いている病院へ転職、空き時間で育児や副業・執筆活動をおこなっています。
国家資格をもっているので、この様に人生にあわせて職場を変化させやすいですね。
5. まとめ
- 臨床工学技士は病院によって、需要、業務、働き方が違う!
- 需要がある分野がかわってるだけで需要がなくなっていない!
- 日々変化する医療業界に対応できる職種である
- 働き方はたくさんある!医療と機械が好きな人にはおすすめ!
好きなことは、必ず仕事に活かせます!
この記事を進路の参考にしていただければ幸いです。